【行政事件訴訟法・取消訴訟】飛行場周辺住民の原告適格(最判平1.2.17) 世界一分かりやすい解説!

判例問題
最判平1.2.17事案

行政事件訴訟法 – 取消訴訟の判例に関する図解化第2弾です!

第2回目は取消訴訟の訴訟要件の一つである原告適格が争点となった超重要判例である【航空運送事業の免許取消を求める飛行場周辺住民(最判平1.2.17)】についてです!

判例知識だけでなく「原告適格」・「法律上の利益を有する者」・「法律上保護された利益についての理解も深めることができるので楽しんでください!

航空運送事業の免許取消を求める空港周辺住民(最判平1.2.17)

早速、図解化した事例を確認してみましょう:

最判平1.2.17事案
事例の説明と争点
  • 【事例】新潟空港において、運輸大臣(Y)がA航空会社に①航空運送事業免許処分を与えたが、飛行場周辺住民Xらが、騒音などを理由に、②事業免許処分の取消を求めた。
  • 【争点】①航空運送事業免許処分に対し、航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民に取消訴訟を求める原告適格が認められるか?
結論

航空運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民は、当該免許の取消しを訴求する原告適格を有する

飛行場周辺住民に原告適格が認められた理由

それでは飛行場周辺住民原告適格が認められた理由について、行政事件訴訟法の条文重要判例を用いて説明していきます。

原告適格とは?

原告適格」は行政事件訴訟法9条で定義されているので、最初にその条文を確認しましょう!

行政事件訴訟法9条(原告適格)外部リンク先

原告適格:処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。(括弧書き省略)

つまり、「法律上の利益を有する者」に限り「原告適格」があるということです。

法律上の利益を有する者とは?(最判昭53.3.14)

法律上の利益を有する者」ってどんな人って思った皆さん、素晴らしいです。「法律上の利益を有する者」が定義された判例を確認しましょう!

法律上の利益を有する者」とは?(最判昭53.3.14 外部リンク先)

当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者

この「法律上の利益を有する者」の定義は、原告適格を理解する上で非常に重要なため、できれば暗記しておきましょう。自分が行政書士受験生だった時は、この文言を手帳にメモって、何回も見ることで覚えました。この定義を覚えておくと取消訴訟の原告適格に関する理解がとても深まります

飛行場周辺住民の法律上の利益とは?

つまり「法律上の利益を有する者」を言い換えると「当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」ということが分かりました。

飛行場周辺住民の「法律上保護された利益」は以下のように指摘されています:

最判平1.2.17の判旨より抜粋 外部リンク先

(航空法101条によって)飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって著しい障害を受けないという利益

つまり、航空法飛行場周辺住民航空機の騒音によって著しい障害を受けないという利益保護しているということです。

図解によるまとめ

原告適格」・「法律上の利益を有する者」・「法律上保護された利益」という難しい文言が出てきたため、混乱してしまった方もいると思いますので、以下の図解を確認してみてください。

原告適格論理展開
  • 運輸大臣(Y)による航空運送事業免許処分 ⇒
  • 航空機の騒音 ⇒
  • 航空法が保護している飛行場周辺住民の「法律上保護された利益」を侵害 ⇒
  • 法律上の利益を有する者」に該当 (最判昭53.3.14) ⇒
  • 原告適格」あり (行政事件訴訟法9上の定義より)

ということになります!

参考:判旨(裁判所HPから引用)

判旨原文ママ:引用先(裁判所HP

申請に係る事業計画が法一〇一条一項三号にいう「経営上及び航空保安上適切なもの」であるかどうかを、当該事業計画による使用飛行場周辺における当該事業計画に基づく航空機の航行による騒音障害の有無及び程度を考慮に入れたうえで判断すべきものとしているのは、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によつて著しい障害を受けないという利益をこれら個々人の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるのである。したがつて、新たに付与された定期航空運送事業免許に係る路線の使用飛行場の周辺に居住していて、当該免許に係る事業が行われる結果、当該飛行場を使用する各種航空機の騒音の程度、当該飛行場の一日の 離着陸回数、離着陸の時間帯等からして、当該免許に係る路線を航行する航空機の騒音によつて社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である

まとめ

いかがだったでしょうか?

判例知識だけでなく、「原告適格」・「法律上の利益を有する者」・「法律上保護された利益」の理解も深めることができたと思います!

今後も超重要判例について図解化していくのでご期待ください!

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