【行政事件訴訟法】最判平17.7.15 病院開設中止勧告の処分性 世界一分かりやすい図解シリーズ

判例問題
病院開設中止勧告(最判平17.7.15)

行政法の最大の山場と言えば、記述式でも頻出の行政事件訴訟法です。

そして、行政事件訴訟法で最も重要な訴訟類型は「取消訴訟」です。

行政書士試験の過去問題では「取消訴訟」に関する判例について何度も問われているため、取消訴訟の判例知識完璧にしておく必要があります。

ところが、法律初学者にとって、難解な判旨を読んで判例を理解することは容易ではないと思います。管理人もとても苦労しました。

管理人にとって判例の理解に役立った方法が図解化です。判旨を図解化し、判例の争点結論を図で覚えることで記憶を定着化することができました。

そこで、行政事件訴訟法 – 取消訴訟の判例に関して図解化して解説していくシリーズを始めたいと思います。

第一回目は取消訴訟の訴訟要件の一つである処分性が争点となった超重要判例である【病院開設中止勧告(最判平17.7.15)】についてです!

病院開設中止勧告(最判平17.7.15)

早速、図解化した事例を確認してみましょう:

病院開設中止勧告(最判平17.7.15)
事例の説明と争点
  • 【事例】上告人Xは①病院開設の許可申請をしましたが、被上告人(富山県知事)によって②病院開設の中止勧告を受けました。
  • 【争点】②病院開設の中止勧告は行政処分に該当するのか?
結論

病院開設の中止勧告は行政処分に該当する

病院開設中止勧告の処分性が肯定された理由

原則、「作為又は不作為を求める指導勧告助言」は処分性が無く行政指導に分類されます。

行政手続法の重要条文である2条6項(行政指導)を確認しておきましょう。

行政手続法2条6項(行政指導)外部リンク先

行政指導:行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導勧告助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

つまり、最判平17.7.15における病院中止勧告は基本的には行政指導と考えられるため、処分性が否定されるはずですが、処分性が肯定されました。その理由について図解によって解説します。

病院中止勧告について処分性が肯定された理由の図解化
病院開設中止勧告(最判平17.7.15)

この図解化の通りです。つまり、病院の中止勧告を拒否した場合、保険医療機関の申請を拒否されるため、病院を開設することができなくなります。これは明らかに「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するため、病院中止勧告処分性が肯定されたというわけです。

行政手続法2条2(処分)外部リンク先

処分:行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。

参考:判旨(裁判所HPから引用)

判旨:引用先(裁判所HP

医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は,医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども,当該勧告を受けた者に対し,これに従わない場合には,相当程度の確実さをもって,病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。そして,いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては,健康保険,国民健康保険等を利用しないで病院で 受診する者はほとんどなく,保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから,保険医療機関の指定を受けることができない場合には,実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。 このような医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告の保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると,【要旨】この勧告は,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他 公権力の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である

まとめ

いかがだったでしょうか?

難解な判旨図解化することで理解しやすくなったと思います!

今後も超重要判例について図解化していくのでご期待ください!

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